漢方コラム
朝ドラ「らんまん」とアケビたち
マニアの方々はそこまで気になるのですねぇ。
そう聞くと私もやはり気になります。その一瞬の画像を停止しては観て、その種類を確認しようとしましたが…。
アケビの種類
そこで以下に「アケビ」と「ミツバアケビ」の写真を見ながら違いを確認してみたいと思います。
因みに「ゴヨウアケビ」は、牧野富太郎博士が命名したもので、「アケビ」と「ミツバアケビ」の雑種と考えられています。
アケビ属の種類を見分けるには、まずは葉っぱです。アケビの葉は、5枚に見えるものと3枚に見えるものがあります。アケビは、葉身が掌の形に3枚又は5枚に分かれた掌状複葉(しょうじょうふくよう)です。3枚又は5枚の一つ一つを小葉といいます。
花の形状
アケビは、花序が束状に釣り下がっていますが、ミツバアケビはブドウの房っぽく見えます。
名前の由来
アケビの果実
漢方薬の生薬:モクツウ(木通)
「あけび」と入力すると「木通」と漢字がでます。
「木通」は、訓読みで「あけび」、音読みでは「モクツウ」です。漢方は、もっぱら音読みなので「モクツウ」とよびます。
モクツウ(木通)は、アケビ又はミツバアケビのつる性の茎を、通例、横切りしたものです。つるには細い孔があり、通っている、そのため「モクツウ」を「ツウソウ(通草)」ともいいます。
ドラマで万太郎が大量に購入していた「本草綱目(ほんぞうこうもく)」という本草書にも記載があります。
モクツウ(木通)の効能
生薬の働きは、元の植物の形状や性質を、人の身体に投影して捉えることがよくあります。
ツルの中は、空洞というわけではありませんが孔があり、そこを通す、人の身体の中でも通す働きがある、と考えられています。
←モクツウ
モクツウ(木通)は、氣を通じ、血を巡らせ、手足を温める働きがあります。
荒木朴庵先生は「氣を通じ血を循らし、よく手足を緩む」と表現されています。手足の強い冷えに用いる当帰四逆湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)にも配合されています。
水をさばく働きがあるので、いわゆる尿路疾患用の漢方薬にも配合されています。
一つ一つ違う植物
今回、思いもかけずドラマの中でアケビと思われる映像がバーンとアップになったところから、アケビの種類を確認することにしました。
今回は、アケビの違いがわかりました。ドラマの主人公の万太郎が言う「新しいことの発見はワクワクする!」というのも納得です!
朝ドラ「らんまん」では、主人公の万太郎が「植物はそれぞれ違うんじゃ。それぞれ役割があるんじゃ」といいます。また「雑草という植物はない」とも。
植物が一つ一つ違うように人も一人一人違っていて、それぞれの場で役割がある。私も万太郎に励まされて日々を過ごしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
文 写真:若草漢方薬局 吉田淳子
(花の写真は2015.04.15に城西国際大学植物園にて撮影。閉園)
参考文献
新訂原色 牧野和漢薬草大図鑑 北隆館
臨床百味 本草綱目 李時珍著 寺師睦宗訓
薬用植物学 東京理科大学薬学部 遠藤次郎ら著
生薬単改定第2版 NTS社 原島広至著
身近な薬用植物 平凡社 指田豊ら著
新古方薬嚢 荒木性次著