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漢方コラム

気の衝き上げに用いる3つの苓桂〇〇湯~その4~

漢方コラム

花粉症の症状にお悩みの方が増えてきました。

 

鼻水、くしゃみ、咳、目のかゆみ……

 

花粉が飛散し始めた1月下旬から、5月頃まで続く方もいらっしゃいます。

 

漢方薬で花粉症というと「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」が有名です。

 

「小青竜湯」は、体表と肺を温め、咳や鼻水を改善します。お体質や症状が合えば良く効きます。

 

ただ、配合生薬の「麻黄(まおう)」が、がっつり温めて汗を出させるので、お身体が弱っている方には要注意です。

 

花粉症に用いるのは「小青竜湯」ばかりではありません。お体調や体質に合わせて選方する必要があります。

 

 

 

ところで、以前にご紹介していた「気の衝き上げに用いる3つの苓桂〇〇湯」ですが 

 

二つまでご紹介して、あと一つが残っていました。

 

この残りの一つは、「苓桂味甘湯」。 

 

3つの苓桂〇〇湯について記載したのは、2か月ほど前でした。

(年月が経つのは早い💦)

ここでもう一度概略をご紹介します。

 

苓桂〇〇湯は、表虚(身体の表面の陽気が足りない)のタイプの方に用いるものです。 

 

3つの苓桂◯◯湯

 

苓桂甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

 

苓桂甘湯(りょうけいかんそうとう)

 

苓桂甘湯(りょうけいかんとう)

 

これらの漢方薬は、構成する4つの生薬が名前に表されています。

 

赤字以外は、茯苓(ぶくりょう)、桂枝(けいし)(実際は桂皮を使用)、甘草(かんぞう)です。 

 

それら生薬の特徴をざっくり表現すると; 

 

茯苓(ブクリョウ):水(身体の中を流れる大切な栄養のある水分)の巡りを整える(余分なものは排出し、不足しているところには届ける)

 

桂枝(ケイヒ)(実際は桂皮(けいひ)):体表を温めながら陽気を補い、のぼせを下げる

 

甘草(カンゾウ):緩めて、通りを良くする。

 

それら共通の3つの生薬については「その1」に記載しています。

https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/5535

 

苓桂甘湯については「その2」に

https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/5566

 

苓桂甘湯については「その3」に記載しました。

https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/5666

 

今回は、苓桂甘湯(りょうけいかんとう)についてみていきたいと思います。 

 

苓桂甘湯の構成生薬は、

茯苓、桂枝(桂皮)、五味子、甘草です。

 

五味子について

 

五味子(ゴミシ)はチョウセンゴミシの果実です。 

 

 

北海道薬科大学にて撮影 2016.9.2

 

 

生薬の五味子は、韓国では五味子茶(オミジャチャ)として飲まれているそうです。

五味子を煮だすと、きれいな赤色になります。

 

五味子という名前は、5つの味があることから名付けられたといわれています。

 

それでも酸っぱさが際立っているように感じます。

 

五味子の薬嚢について、

神農本草経には「五味子味酸温、気を益し咳逆上気、労傷羸痩を主どり不足を補い陰を強め…」とあり

 

薬徴には「咳而冒する者を治する」とあります。

この「冒」というのがポイント。

 

冒はうつ冒のこと。

 

苓桂甘湯

 

苓桂甘湯は、コタローさんからエキス顆粒が販売されています。

 

「この処方は、体内に冷えと水の滞りがあり、手足が冷えて、上気して顔が赤くなり、頭がぼんやりしたり、動悸がしたり、小便が出にくく、気力が落ちて、気分沈鬱なタイプに効果があります。 

 

苓桂味甘湯エキス顆粒G「コタロー」は、かぜの熱が下がった後に残る咳、気管支の炎症などによる咳や耳(内耳や中耳)の炎症が長引いて耳がふさがるように感じるような症状の方の漢方薬です。」

と小太郎製薬の添付文書の冒頭にあります。

 

金匱要略の痰飲咳嗽病38条に以下の記載があります。コタローさんの説明は、条文に近いことが分かります。 

 

38.  青龍湯下已 多唾口燥 寸脉沈 尺脉微 手足厥逆 氣從小腹上衝胸咽 手足痺 其面翕然如醉状 因復下流陰股 小便難 時復者 與茯苓桂枝五味甘草湯 治其氣衝

(茯苓桂枝五味甘草湯は、苓桂味甘湯と同じ) 

 

 

因みに、【効能・効果】には「体力中程度で、手足が冷えて顔が赤くなるものの次の諸症:のぼせ、動悸、からぜき、のどのふさがり感、耳のふさがり感」とあります。

 

効能効果の説明は、どこか分かりにくい部分があり、冒頭の説明の方がしっくりきます。  

 

 

さいごに

 

苓桂味甘湯も、気の衝き上げからくる症状に用いる漢方薬です。上気して顔が赤くなったり、胸につき上げると動悸になったり、冒のために耳がふさがったようになっているのを治す漢方薬。 

 

春は、まだ寒く体表から発散しにくく、さらに陽気が上がるために、人の身体も気が上に上がりやすいという特徴があります。

 

原理は共通していても、呈する症状は人それぞれ。

 

ご自身に合う漢方薬でお体調を整えていただければと思います。

 

 

今回も最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。 

 

 

 

女性のための漢方相
若草漢方薬局
 
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TEL/FAX:03-6206-9938
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【この記事の著者】若草漢方薬局 店主 吉田淳子 

 

 

 

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