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漢方コラム

気の衝き上げに用いる3つの苓桂◯◯湯 その1

漢方コラム

 

今年の8月に私が経験した嘔吐・めまいについて、

「夏場の冷えのぼせの一例」

https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/4894

 

を記載しましたところ、

その後、なかなかの反響をいただきました(笑)

 

「私もそういうことよくある!」

「私も同じ症状だから桂枝湯を飲みました!」

「桂枝湯のエキス顆粒をカジカジしました」

などなど…。

 

エキス顆粒の服用方法は、お湯に溶かすか、なければ水でお飲みいただくのが正しいです。薬剤師としては、正しい服用方法をお伝えしなければならないので念のため申しあげておきますね。 

 

とはいえ、気持ち悪くて嘔吐している時は水分も入らない、

そんな時は、時と場合によって臨機応変に服用する場面もあると思います。 

当方で把握している患者さまの場合は状況に応じてお伝え出来ますので、ご相談くださいね。

 

 

さて、今回は、最近ご相談の多い、めまいや頭痛、動悸などに用いることができる漢方薬についてご紹介していきたいと思います。 

 

3つの苓桂◯◯湯

 

めまいや頭痛、動悸が症状として表れるとき、その原因として様々なことが考えられ、漢方薬としては様々なものが用意されていますが

 

今回は、表虚(身体の表面の陽気が足りない)のタイプの方に用いられる

「3つの苓桂◯◯湯」をご紹介していきたいと思います。 

 

苓桂甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

  茯(ぶくりょう) 枝(けいし) (びゃくじゅつ) 草(かんぞう)

 

苓桂甘湯(りょうけいかんそうとう)

  茯(ぶくりょう) 枝(けいし) 草(かんぞう) (たいそう)

 

苓桂甘湯(りょうけいかんとう)

  茯(ぶくりょう) 枝(けいし) (ごみし) 甘草(かんぞう)

 

この3つの処方は、それぞれ4つの生薬からなり、そのうちの3つが共通しています。

つまり、茯苓(ぶくりょう)、桂枝(けいし)、甘草(かんぞう)が共通していて、残りの1つが異なっています。

 

共通している茯苓、桂枝、甘草の骨格

茯苓(ぶくりょう) 

 

茯苓については、以前のコラム「水の巡りを整える「当帰芍薬散」の3つの生薬」に記載していますので参考にしていただければと思います。 

https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/2528

 

ブクリョウ

 

ブクリョウ(茯苓)の効能について、荒木性次先生は「新古方薬嚢」の中で、

「水を収め、乾きを潤し、その不和を調う、故に動悸を鎮め衝逆を緩下し水を利して眩悸等を治す」

と記載されています。

茯苓は、一般的には利水作用に目が行きやすいのですが、逆に乾いた部分を潤すという働きがあるということです。

 

薬徴には、悸および肉瞤筋惕を主治するなり、旁ら小便不利、頭眩、煩躁を治すと記載されています(肉瞤筋惕(にくじゅんきんてき)とは筋肉がピクピク痙攣すること)。

 

 ブクリョウ

 

 

桂枝(けいし)

 

桂枝についても、前述のコラム「夏場の冷えのぼせの一例」に記載していますのでご参照ください。https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/4894

 ケイヒ

 

荒木性次先生は

「ボク曰く桂枝は味辛温、汗を発し表を調ふ、又衝逆を主どると謂わる、衝逆とは下から上へつきあぐる勢ひを云ふ動悸頭痛息切れ肩のはり等此衝逆より生ずる者あり、表の陽気虚する時はよく此衝逆を発す桂枝よく表を救ふ故に斯く称するものなるべし。」  

 

と記されています(「新古方薬嚢」(方術信和会発行))。 

 

ここでは、「表の陽気が虚する時」「衝逆」が重要かと思います。 

 

ニッケイ 東北大学 2008

 

甘草(かんぞう)

カンゾウ

 

甘草の効能について、

薬徴には「甘草主治急迫なり故に裏急急痛を治し旁(かたわ)ら厥冷(けつれい)煩躁(はんそう)衝逆(しょうぎゃく)等の諸般急迫の毒を治する也」とあり、

 

荒木性次先生は「甘草は味は味甘平、緩和を主として逆をめぐらす効あり、逆とは正に反する事なり、めぐるとは元に戻る事なり、故によく厥を復し熱を消し痛を和らげ煩を治す」(「新古方薬嚢」 方術信和会発行)と記されています。

 

簡単にいえば、甘草は甘味で緩めて、諸々の通り道を開く、といったところでしょうか。 

 

スペインカンゾウ 20190529 広島大学

 

今回のまとめ

 

今回は、「苓桂甘◯湯」や「苓桂◯甘湯」で表される3つの漢方薬に共通する、3つの生薬をご紹介しました。

 

茯苓(ブクリョウ)で水(身体の中を流れる大切な栄養のある水分)の巡りを整え(余分なものは排出し、不足しているところには届ける)

 

桂枝(ケイヒ)(実際は桂皮(けいひ))で、体表を温めながら陽気を補い、のぼせを下げ、

 

甘草(カンゾウ)で緩めて、通りを良くする

といった骨格だと私は思っています。

 

そこにもう一つ生薬が加わることで、また方向性が少し異なる作用を持ってくるわけです。 

 

今回は、骨格のご紹介だけになってしまいました💦

またの機会に、◯のところに入る生薬とそれぞれの漢方処方の効能効果をご紹介したいと思います。 

 

さいごに

 

さて、ここにきて、急に寒くなってきました。 

 

これまで夏の余韻の気分だったところに、急に師走の寒さ。

 

身体がついていかない、という声をよくうかがいます。

 

冷えのぼせ、めまい、吐き気、寒暖差ストレス、気分の落ち込み……。 

お一人で抱えず、是非ご相談くださいね。 

 

今回も最後までお読みいただきましてありがとうございました☺

 

 
 
女性のための漢方相
若草漢方薬局
 
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【この記事の著者】若草漢方薬局 店主 吉田淳子 

 

 

 

 

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