漢方コラム
雨の日光植物園へ~トリカブトの花の見頃に~
先日の連休に日光植物園を訪ねました。
ゴールデンウィークに訪ねて以来、今年二度目でした。
(その時のブログはこちら↓)
https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/3699
前回トリカブトの群生があることを知り、トリカブトの花を見たことがなかった姉貴が「是非見たい!」と希望したからでした。
当日は曇り又は雨予報でしたが、「曇り」予報を信じて決行することにしました!
当日家を出る時、やはりうっすら小雨……。
そして現地に到着。しっかり雨でした~笑
雨の日はヒルに注意
日光植物園の入り口に到着し、姉が受付をして戻ってきた際
「雨の時に草むらに入るとヒルに噛まれるんだって」
と、ヒル除けスプレーを渡されました。
二人でシューシューしていざ雨の中を散策開始!
とにかくヒルに狙われないように草むらは避けつつ
「トリカブト」の花を姉貴に見せてあげなきゃという使命感で歩みを進めました。
トリカブトの群生地
広い園内、迷いながら、雨に濡れながら
無事に「ヤマトリカブト」の群生地に到着!
ヤマトリカブト 20240922 日光植物園
違う所にも、あちこち咲いていました。
ヤマトリカブト 20240922 日光植物園
そういえばトリカブトが生育しているのはけしからんと思う方もいらっしゃるようですが、敢えて言えばスズランやクリスマスローズなども毒性を持つ植物。
キチンと特徴を把握して取り扱うことが大切なのでしょう。
植物トリカブトについて
さて、今回生育していたトリカブトは「ヤマトリカブト」でした。
トリカブトは日本には40種類以上あるようです。
私は各地の植物園で撮影した植物を、プラカードに記載の名前に従って整理しております。トリカブトについては、ヤマトリカブト、オクトリカブト、ハナトリカブト、カラトリカブトが専らです。
そして、いつも撮影して保存するだけして、それらの違いを把握していませんでした(撮り鉄ならず、撮り植?)。
今回トリカブトの花は、見るまで、もっとゴージャスなものを想像していました。
「あれれ?もうちょっと派手なのは何トリカブトだっけ?」
不勉強が露呈してしまいます。
以前撮ったゴージャスな方のトリカブト写真↓
ハナトリカブト 2019.10.24 星薬科大学
私が想像していたのはハナトリカブトでした。
そうこうして調べていくと、
ヤマトリカブトの学名は、Aconitum japonicum Thunberg
これはオクトリカブトと一緒。
ハナトリカブトの学名は、Aconitum carmichaeli Debx.
これはカラトリカブトと一緒でした。
つまり、ヤマトリカブトは別名オクトリカブト。ハナトリカブトは別名カラトリカブトです。
ヤマトリカブトとハナトリカブトの違い
ヤマトリカブトは日本産。日本産は少し奥ゆかしさがあるように感じます。
因みにハナトリカブトは中国産。
ではヤマトリカブトとハナトリカブトの見た目の違いはどのようなところにあるのでしょう。
牧野和漢薬草大図鑑によると、ヤマトリカブトは草丈30~100㎝で、ハナトリカブトは草丈60~120㎝。
ハナトリカブトの方が少し大きいようです。
また、花期はヤマトリカブトは8~10月なのに対し、ハナトリカブトは6~7月。
生育している場所、高低にもよるでしょうね。
葉っぱは、ヤマトリカブトの方が、シュっとした菱形で、ハナトリカブトの方がやや大きめで全体の形が掌状なのかな。
ハナトリカブト(カラトリカブト)は花が大きくまとまっているので、栽培されて鑑賞用の切り花として売られているようです。
花といっても花びらじゃない!
ここで花というと、一般的には茎の上の土台のような花床の上に、外側からガク片、花びら(花弁)、雄しべ(雄ずい)、めしべ(雌ずい)の4種類の器官が配列されているものをいいます。
今回調べて知ったのが
な、な、なんと、
私がこれまで花びらだと思っていた紫色の部分は「ガク片」でした~!
花弁はその中にある「イ」の形をしたものだそうです←「身近な薬用植物」指田豊ら著(平凡社)に「イの形」って書かれています。
「イ」の形って……確かに(笑)
(上の図は東京理科大学(遠藤先生、中村輝子ら著)の資料を基に描いてみました。やはりこのテキストは秀逸。復刻してほしいなぁ)。
このテキストに走り書きのメモがありました。おそらく中村輝子先生に伺った、この花弁はガクの中で虫が働きやすいような形状に変化したと。
トリカブトを減毒化して有用な生薬に
トリカブトの根茎が猛毒なことは良く知られているところですが、
ヤマトリカブトとハナトリカブトの塊根を加熱して加水分解することにより減毒化、無毒化され、有用な生薬・附子(ぶし)となります。
附子は、八味地黄丸(八味腎氣丸、八味丸、腎氣丸とも呼ぶ)にも配合されています。
八味地黄丸が登場する以前のコラムはこちら↓
https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/3384
附子は、そのほか桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)、真武湯(しんぶとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などに配合され、身体の表面の冷えからくる諸症状に大変有用な生薬です。
さいごに
今回もすっかり雨にあたってしまいましたが、トリカブトの花を姉貴が見ることができたし、着替えもばっちりで体調も崩さずに帰ることが出来ました~♪
今回はこれまで見過ごしていたトリカブトの形態や種類についても知ることができてよかったです。出かけると必ず新たな発見があり、嬉しいかぎりです。
今回も最後までお読みいただいてありがとうございました!