漢方コラム
「瓊玉膏」の6つの成分(後編)~飲み方、製法~
「あながた植物だとしたら、いま欲しいのはお水の潤いですか?それとも太陽のエネルギーですか?」
と伺うことがあります。
それは、生命力を補う働きの漢方薬や漢方製剤が必要と思ったときに、腎陰虚か、腎陽虚かを確認したいとき。
「水のうるおい」と答えた場合、
「瓊玉膏」は候補となる漢方製剤です。
さて、それはどうしてでしょうか。
前回は、「瓊玉膏」の名前の由来、効能効果、6つの成分のうちの3つ(地黄、人参、茯苓)についてご紹介しました。
https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/4175
今回は、後編として、残りの3つの成分(枸杞子、沈香、蜂蜜)についてと、瓊玉膏の製造方法、服用方法についてご紹介したいと思います。
「枸杞子」について
枸杞子は、ナス科クコの果実です。
薬膳などでもお馴染みで、このまま食べても美味しいですね。
古典の「神農本草経」には上薬として、
味苦寒、「久しく服せば、筋骨を堅くし、身を軽くし、老に耐ゆ」
と記載されています。
また、枸杞子は、平安時代から強壮薬として知られ
肝腎を補い、血を補い、目を明らかにする効能があり、視力の低下や眩暈、腰や下肢の倦怠感、性機能障害などに用い
不老長寿、抗老薬の代表的な生薬ともいわれています。
「沈香」について
沈香(じんこう)は、 ジンチョウゲ科ジンコウの材です。
古くから有名な香木として知られています。
香りの力で、精神を落ち着かせる働きがあり、気を巡らす剤によく配合されています。
古典の本草綱目には、沈香は「風水毒腫を療し、悪気を去る」とあります。
また、降気・止痛・止嘔・平喘の効能があり、体内を温めて痛みや吐き気を止め、腎気を補い、喘息を治す作用がある、ともいわれています。
「蜂蜜」について
蜂蜜は、おなじみですね。
古典の「神農本草経」には、「石蜜味甘平、心腹邪気、諸驚癇痙を主どり五蔵の諸不足を安んじ氣を益し中を補ひ痛みを止どめ毒を解し衆病を除き百薬を和し久服すれば志を強くし身を軽くし飢えず老せざらしむ」とあります。
また、荒木性次先生は、「よく緩め、よく潤す。この潤ほす所もっとも蜜の勝れたる所なり」と記されています。
瓊玉膏の作り方
さて、ここまでご紹介してきたように、瓊玉膏は、「生地黄の搾り汁」、「人参末」、「茯苓末」、「枸杞子末」、「沈香末」、「蜂蜜」からできます。
瓊玉膏は、それらの成分だけでなく、作り方にも特徴があるようです。
「伝統的な」作り方;
生の地黄の搾り汁(カスは不使用)に、その他の生薬の粉末と蜂蜜を溶かして均一にする(このとき水は加えず、生の地黄の搾り汁のみ使用)
↓
密封した容器を大釜の湯内に入れて三昼夜(72時間)煮る(この時の燃料は桑)
↓
取り出したものを井戸水にて一昼夜冷やし、さらに大釜に入れ一昼夜(24時間)煮る
↓
放冷
現在はこのような伝統的な製法を踏襲し、三日三晩、二重蒸気釜で加熱した後、徐々に冷却させる独特の方法を採用しているそうです。
ここで特記すべきは、瓊玉膏は、水を全く使わずに蒸熟の特殊性により製造されていること。
つまり、それは生地黄の汁を用いたことで行われています。
そのような成分と製造方法だからこそ、古書に「精髄充満」と記載がある「瓊玉膏」となるのでしょう。
ここで「精髄充満」というのは、血や津液の不足(いわゆる陰虚)を補い、身体を作る元となる精を充填し、髄(脳髄、骨髄、脊髄)を補う働きというということです。
瓊玉膏の飲み方
基本的に、1日あたり、添付されているサジ1~2杯をそのまま又はお湯に溶かして服用します。
とても胃の弱い方は、「地黄」が胃にさわったり下痢をすることがありますので、その場合は1/5~1/4量で様子をみながら服用してみてください。
その後、徐々に2/5~1/2量に増やし、ひと月後には1回1杯飲めるようになるかと思います。
夏は冷たいものを飲みがちですが、瓊玉膏のお湯割りはホッとします。
さいごに
先人の叡智のつまった「開豊 瓊玉膏」。
うるおいが欲しい方の美容・アンチエイジングに、
疲れがとれない、働き盛りの方の滋養強壮薬に、
妊娠ご希望の方、生命力を高め、次の世代へと受け継ぐお手伝いに用いることができます。
「開豊 瓊玉膏」は、不老長寿を願い創生された「美しい碧玉」という意味をもつ、トロリとした膏状の医薬品です。
生命力と美しさを育てる不老長寿の滋養・滋潤薬を、日常のケアや
妊娠へのステップにお役立ていただけますと幸いです。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
参考資料:
「神農本草経解説」 森由雄著 源草社
「臨床百味本草綱目」 李時珍著 寺師睦宗訓
「生薬単」改定第2版 NTS社
「新古方薬嚢」 荒木性次著 方術信和会
開豊 瓊玉膏 添付文書 栃本天海堂
「慢性病と漢方薬」 TEUN communications
「漢方のくすりの辞典」 鈴木洋著、米田該典監修 医歯薬出版株式会社)