日常コラム
東京理科大学の薬用植物園をたずねました💕
本日、東京理科大学の薬用植物園にお邪魔してきました!
私が理科大の薬用植物園を初めて訪れたのは23年ほど前のこと。
その頃、私は漢方薬・生薬認定薬剤師の第一期生だったので、薬用植物園実習を必修研修として受けなければなりませんでした。
正直、そのときは「植物園実習なんて面倒くさいなぁ~」なんて思っていました。
そう、その頃は全く植物園には興味がなく、実はいやいや参加した、家から一番近かった理科大の薬草園実習に参加したのでした。
ところが、その実習で教えてくださった故・中村輝子先生のお話が面白くて、すっかりハマることになったのです。
植物学の教本
その研修の際、理科大の教本をいただいたのですが、その教本がまた秀逸でした✨
実習後、各地の植物園に行くようになった際には、その場で分からないことをすぐに調べられるように、その教本を持ち歩くようになりました。
そして、少しでも軽くするために、4つに分けてしまい各論と索引だけを持ち歩くようになりました💦
今回、この教本について理科大に問い合わせてみたところ、
8年ほど前から理科大の教授になられた羽田先生はご存じないとのこと。
そして、理科大はしばらく植物園の実習を受け入れていらっしゃらなかったこともあったので、見学させていただけないか打診してみました。
植物園見学
本日は流山市の市民大学の観察会もあり、教授の羽田先生もいらっしゃるとのことで、見学させていただけることになりました💕
そして、本日は羽田先生にご案内いただけました!
羽田先生、とてもお優しいので、わたしってば相当ペラペラおしゃべりしながら見学してしまいました。
多くの植物は、5月上旬が開花時期。もう咲いている植物も減っているとのこと。
それでもかまわないのです。その時々の表情が見られたら幸せです。
今回、久しぶりに理科大におじゃまして驚いた、というか感激したのは、学生に対する植物の見せ方の心配りです。
心配りの展示
どう心配りかというと、まず、ペットボトルの中に植物全草が入れられ、地下部も観察できるようになっていたことです。
ムラサキ
小さなお花が可愛らしいムラサキ。
←ムラサキ。
ムラサキの根が紫根(しこん)という生薬になり、軟膏「紫雲膏(しうんこう)」に配合されています。
紫雲膏は、花岡青洲が考案した軟膏で、切り傷、やけどなどに効きます。
一家に一つはあると重宝。
とはいえ、紫色なので、塗る時は衣類への付着に要注意です。
お花は白いけれど、根は紫色です。
セリバオウレン
そして、もう一つの心配りは、あちらこちらに虫よけ線香がたかれていたところ。
セリバオウレンの前にペットボトルと虫よけ線香がありました💕
立ち止まって説明を聞く場所には、虫よけ線香を置いてあるのだそうです。
植物園は虫よけが必須ですので、この心配りはとても嬉しいです!
←セリバオウレン
←キクバオウレン
セリバオウレンとキクバオウレン。
これらの葉の複葉の違いを観察したり、根茎の色をみたりして教えていただくのでしょう。
https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/722
(↑以前のコラムでオウレンについて記載しております。)
↑セリバオウレンの地下部
先生が実際の根茎の黄色を見せてくださいました(感涙)。
根茎が生薬「黄連」になり、血の熱を涼するために使用されます。
血の熱を涼することで、心窩部の痞え、精神不安などにも効果があります。
黄連湯(おうれんとう)、葛根黄連黄ゴン湯、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、小陥胸湯(しょうかんきょうとう)などに配合されています。市販の胃薬にもよく配合されています。
その他の植物
トウキ
ホッカイトウキとトウキも咲いていました。
復散形花序がチラチラと可愛いです。
↑ホッカイトウキ
↑トウキ
トウキの方が、枝が茶色っぽいようです。
トウキの根が生薬の当帰となり、血を増し巡らすため婦人科疾患に頻用されます。
https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/2457
(↑当帰については以前のブログをご覧ください)
カギカズラ
今回は、カギカズラのお花を初めてみました。
頭状花序が丸っこくて可愛いです。小さな白緑色の花が集まっています。
↓生薬になるのはカギの部分。せっかく先生が撮影アングル教えてくださったのに、逆光でした💦
どうしてこのアングルだったかというと、1個の茎刺を持つ節と、2個の茎刺を持つ節が交互に現れているのが特徴だからです。クリっとしたカギが、1、2、1、2,となっています。今回の上の写真だと、ちょうど枝の陰になって1個の茎刺が見えなくなってしまいました💦
↓参考までに、以前撮影した写真では、ツルに1個、2個、1個、2個と交互についているのが分かるでしょうか。
2008東北大学
その茎刺の部分が生薬の釣藤鈎(ちょうとうこう)になります。
釣藤鈎は、鎮静・鎮痙作用があり、有名な抑肝散(よくかんさん)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)、七物降下湯(しちもつこうかとう)などに配合されています。
抑肝散は、気の昂ぶり、イライラに効果的な明代の処方であり、また七物降下湯は、昭和の大家である大塚敬節先生が考えられた処方です。いずれも古方(傷寒論・金匱要略)の処方ではありません。
ラズベリー
最後にラズベリーをご馳走になりました♪
とても美味しかったです💕
植物園の管理はとても大変。
雑草も生えてしまうし、植物の分類も変わっていきますし。
学生さんが皆さん薬用植物に興味があるわけでもありませんしね(かつての私がそうだったように苦笑)。
でも、人の興味って変わりますしね。
20数年前には全く興味のなかった薬用植物。
今日は久しぶりに私が興味をもつようになった原点に伺うことができてとても嬉しかったです。受け入れてくださった羽田先生に感謝です。そして、あの頃お世話になった故・遠藤先生、故・中村輝子先生に感謝申し上げます。
今日は、1時間半ほどの見学でしたが、若干暑いほどでした。
これからの季節、熱中症に気を付けないといけませんね。