漢方コラム
桜の季節に起こりやすい症状~3つの症例~
今年は珍しく桜も遅咲き。
でも、楽しみが少し伸びたみたいで嬉しいです。
とはいえ、この季節は過ごしにくい、という方がかなりいらっしゃいいます。
花粉症の方、メンタルをコントロールしづらい方、冷えのぼせる方……。
春は、冬から夏へ向かう途中。
季節の変化と共に、ご自身の身体も変化している途中。
季節の変化に身体が合えば、なんなく過ごせるのに
どこか置いてきぼりなお身体とこころが不調になるのでしょう。
今回は、症例をいくつか挙げてみたいと思います。
症例1 慢性鼻炎を「気」の改善で
35歳 細身の女性
主訴:長年の鼻炎。春だけでなくて、一年中鼻水、鼻づまりを繰り返す。
呼吸が苦しい。夜中に後鼻漏があるのか咳で目覚める。
以前は小青竜湯を良く飲んでいたけれど、それでいいのかとご来局。
____
確かに、花粉症で水っぽい鼻水や咳が出る方に、小青竜湯がよく用いられます。
とはいえ、この患者さまがご心配になっているように小青竜湯は血虚の方が長く飲むには不安があります。
血虚の方、麻黄剤がキツイ方で、肺が冷えている時は「水気散(苓甘姜味辛夏仁湯)」も選択肢となります。
逆に肺熱による咳の場合は石膏剤を用いることがあります。その他、慢性的な鼻炎で、いわゆる半表半裏に熱のこもりがあるような場合、自律神経のバランスが取れていない場合には、柴胡剤を用いることもあります。
あるいは、寝汗などがでるタイプの方は黄耆剤も候補になります。
___
この患者さまの場合、当初、肺の冷えに原因があるかと治療をしましたが、一進一退。そこで、この方の特徴的なしぐさを手掛かりとして「気」の巡りを整える製剤を服用していただいたところ、呼吸が楽になり咳もほとんど出なくなりました。
シンプルに「気」を整えることで鼻炎が快方に向かった例でした。
症例2
59歳女性 165センチ 65キロ
赤ら顔 元気あるタイプ 毎晩お酒を飲む
主訴:夜中の鼻血
実はこの方、私の親戚で、普段から何か体調不良があると相談を受け、そのたびに漢方的なウンチクを私から聞いていました。
明け方に私に連絡をしたくても「まだ寝てるよな~」と思ったらしく、また、その日は外せない仕事があり「なんとか治したい」と思っていたよう。
そして、一生懸命考えたそうです。
自分は何をやらかしたか。何を食べたか。
そして気づいたそうです。前日の夕飯。
冷たいお豆腐。冷たいビール。キュウリのサラダ…。
自分は冷たいもので胃を冷やしたのではないかと。
そして、自ら胃を温める漢方薬を飲んだら、スーッと楽になり、その日一日無事に仕事もこなしたとのこと。
一日の終わりにその話を聞いて、もう、素晴らしい!と嬉しくなりました。
「鼻血」という単語で漢方の本を調べると、炎症をおさめる方剤や、気逆を整える方剤が記載されていたりします。この場合は、そういったものではなくて、原因を考察して漢方薬を用いたからこそすぐに改善できたのでしょう。
不調がどこから生じているのか、「原因」からが捉えて漢方薬を用いたときにこそ奏功します。
当店のお客様でも、ご自身が陥りやすい症状が出たときにすぐに対処できるよう、いくつかの漢方薬をストックして、状況に応じて服用されている方々がいらっしゃいます。
そんな風にご利用いただけると本望です。
症例3
22歳
主訴:元気がない。緊張しがち。胃腸虚弱。
元気を補うために所謂、参耆剤を服用中。
気がこもるのかげっぷが出る。身体を動かして巡らせると少し良い。
気がこもるとパニックのようになる。
___
げっぷがたまるのは、気のこもり。気は、肺呼吸で出したり、皮膚呼吸から自然と外に出しているものです。
毎年、春は寒の戻りがありますが、今年のように寒暖差が激しいと、せっかく開いていた皮膚も閉じてしまい、気をもらすことができません。
気は、湯船にしっかりつかって、体表を温めることでも出すことができます。
入浴をシャワーですませるしかない方は、足湯などをしてじっくりと温まってみていただきます。
春の気候と起こりやすい症状
春は気が上がりやすい季節。また、春は三寒四温ともいうように、温かくなったり寒くなったり、日替わりで気温が大きく変わります。
冬のままの体表で、まだ体表が開かないけれど、人の身体の小宇宙では、陽気が上がり、「気」と一緒に「血」「水」も上にあがることがよくあります。
それが、人によっては鼻水だったり、目のかゆみだったり。お酒の陽気と重なって鼻血の方も。パニックのようになる方も。
人によって、持っているその他の要因が違うので、表れ方はさまざまです。
今年は雨や風が多い年になりそうです。
それでも、養生をしながら、季節の変化を楽しんで過ごしたいですね💕