漢方コラム
今年の運気 その1~六気からみる天候と体調~
自然と私たちの身体は密接に関わっています。一年には、春夏秋冬の四季がありますが、気候は毎年同じわけではなく、年によって猛暑、冷夏、台風が多い年などさまざまです。
はるか昔の賢人は、天地の運行を観察し、自然の法則を見出しました。人は、天地の影響を受けているので、天地の運行を知ることで病や治療方針の予測ができたのです。
それらの原則が記載されているのが、漢方の古典である「黄帝内経」の「素問」、特に運気に関する七編(いわゆる運気論)です。
今年(2024年)の運気
さて、今年はどのような年になるのでしょうか。
天地の運行は、「五運」と「六気」というものの組み合わせから求められます。
五運は、木・火・土・金・水が、それぞれ一年ごとに地を順々に支配してめぐり、巡り終えるとはじめにかえって、際限なくこの循環をくりかえします。地の五運は五年で一周します。
天の気は、六気あり、六年で一周します。天の気は、上と下があり、上は司天(してん)、下は在泉(ざいせん)です。私達人間は天と地の間にいます。
六気とは、厥陰・少陰・太陰・少陽・陽明・太陽であり、これらが、司天と在泉(天と地)として一定のペアとなって一年ごとに巡ります。ここで、厥陰は「風」、少陰は「熱」、太陰は「湿」、少陽は「火」、陽明は「燥」、太陽は「寒」を意味します。
この五運と六気を組み合わせると、30通りとなります。
☆太陽司天・土運大過・太陰在泉☆
今年は、十干十二支が甲辰(きのえたつ)で、土運太過(どうんたいか)という年回りです。
そして、六気は太陽司天、太陰在泉です。太陽は「寒」、太陰は「湿」です。
今年は、地震・突風・豪雨の変があり、病は、湿気にあてられて関節その他が痛み・腰から下がおもくだるい、湿・下重の年となると記載されています。
今年の前半は比較的涼気に覆われ、五月の頃に熱気が現れ、このころに雨がふりだし、湿気の作用が始まります。
人は、寒気と湿気の邪気にあてられ、肌肉が萎えて痩せてきたり、足が萎えて不自由になったり、あるいは下痢をしたり、血があふれて上部や下部の孔から漏れ出る病にかかりやすくなると予測されます。
六気は、一年を六つにわけて特徴が説明されています。その起点は、大寒、今年は1月20日です。
初の気:大寒(1月21日頃)~春分(3月21日頃)
二の気:春分(3月21日頃)~小満(5月22日頃)
三の気:小満(5月22日頃)~大暑(7月23日頃)
四の気:大暑(7月23日頃)~秋分(9月24日頃)
五の気:秋分(9月24日頃)~小雪(11月23日頃)
終の気:小雪(11月23日頃)~大寒(1月21日頃)
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~初の気(1月下旬から3月下旬)の頃~
前年の影響で異常に温かで、草木は早く萌えでる。
人々は、冬に寒気にあてられてすぐ発病することなく、春の温暖の陽気に誘発されておこる、さむけを伴わない熱病にかかり、体が熱し、頭痛、嘔吐あるいは皮膚病を生じやすくなる(主気:厥陰(風) 客気:少陽(火))
~二の気(3月下旬から5月下旬)の頃~
だんだんと暖かになるはずなのに、涼気にそこなわれ、伸び始めた草木も涼気にあてられるような気候になることが多くなる。
人々は、陽気が中にとじこめられて、胃腸がいっぱいにつまって張る状態を起こしやすい。(主気:少陰(熱) 客気:陽明(燥))
~三の気(5月下旬から7月下旬)の頃~
冷たい雨が降る。
人々は皮膚のきめが閉じるために熱が中にこもり、はれものを生じたり、下痢をしたり、心臓に熱がこもったようにもやもやしたり、目がくらんで胸がくるしくなったりする病にかかりやすい。(主気:少陽(火) 客気:太陽(寒))
~四の気(7月下旬から9月下旬)の頃~
風と湿気が争って、風が雨をともなってくる。
人々は体表に熱をもって、はあはあと呼吸が浅くなり、また肌肉が萎えて痩せ、足が萎え、あるいは血のまじった粘液便を下すやまいにかかりやすくなる。(主気:太陰(湿) 客気:厥陰(風))
~五の気(9月下旬から11月下旬)の頃~
客気の少陰の熱気がやってきて、陽気がふたたび強くなり、草木は成長し、成熟す。
人々は安泰で病にはかかりにくい気候。(主気:陽明(燥) 客気は少陰(熱))
~終の気(11月下旬から翌1月下旬)の頃~
太陰の湿が作用すると、陰の寒気が天空をごおらせ、強い寒さをともなった風が吹く。
人々はひどく損なわれる。冬時の養生をまもる必要がある。(主気:太陽(寒) 客気:太陰(湿))
(参考文献:「運気 新釈・小曾戸丈夫 たにぐち書店」)
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これらは、あくまでも統計上の原則であり、必ずこの通りだというわけではありません。
今年は歳会の年なので気候は平穏というはなしもありますし、一方、地球温暖化の影響がどこまであるのか、未知な部分もあります。
それでも、まとめると、今年は湿気を乾かし、寒気を温め、こもった気をとってバランスをとるのがよいでしょう、ということです。
先人の知恵を頭の片隅に置きつつ、状況に応じた対応をしていくようにしましょう。
「今年の運気 その2~土運太過~」はこちら↓
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