漢方コラム
生薬の国産化~③シンポジウムで心に響いたこと~
<生薬の国産化~②国産化の課題と解決>のつづき
心に響いた言葉
今回のシンポジウムの質疑応答の際、生薬の国産化の課題と解決を示してくださったシンポジストの先生のお言葉が、私にズドンと響きました。そこでその先生がおっしゃったことをざっくりまとめると
産地と生産者と品種が変われば野菜も果物もすべて味が違う。生薬もそう。その生薬をどう製品化し、薬としてまとめて、処方としてまとめていくのか、それが漢方の極意なのだろうと思う
植物の多様な変異や変化、産地、作り手、歴史的な背景などで生薬の品質にも多様性が生じている
といった内容でした。その先生のニュアンスから
ではそれらの植物・生薬の違いを理解して、特徴により使い分け、患者さまに使っていくのはあなたたち治療家のお仕事ですよね、それは奥深いことでしょう
ということをおっしゃったのではないかと、
そう汲み取って私はギョっとしたというか、「ハードル高っ!!」と思いました。
果たして、それだけのことを感じて、理解して、治療に役立てられる治療家はどれだけいるだろうかと。
ましてや、エキス顆粒や錠剤になった漢方薬を扱っているなかでなかで、そういったことを感じるのは難しくなっていくのではないか。
確かに、生薬は昔とは働きが変わってきているともいいます。先人たちが使っていた生薬と同じ名前でも今の生薬が同じ効能を持っているか、盲信することなく学んでいく必要があります。
当店でも、色々と教えてくれる問屋さんから情報を得ながら生薬を仕入れていますが、まだまだ努力が足りない。
私はどちらかというと植物の観察に出かけて原植物の姿から学ぶように心がけているつもりでしたが、そのようなレベルではない。
それでも、生薬として触れて、形状を見て、匂いを嗅いで、気を感じることをしていることは大切なことだったのだと、改めて感じました。
お客様でも「煎じ薬の方がいい」と言ってくださる方々はそういうところも感じてくださっているのかもしれない。
大地の力、植物の持つ力、生産者さんの手。様々な方のご努力があってこそ届けられた貴重な生薬。感謝をしながら、使わせていただきたいと思いました。
生薬は自然の恵みでもありますが、人々の努力がなければ得られ得ない、
そんなことを感じたシンポジウムでした。
2023年の学会シンポジウム備忘録として。 <おわり>
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生薬の国産化~①生薬流通のこれまで~