漢方コラム
天の気と健康~今年の気候 運気論より~
「氣(気)」というのは実に不思議なものです。
気があう・気がつく・気が滅入る・元気・陽気・陰気など、目に見えないけれど確かにあるもの。
漢方では、この「気」の存在を重視します。
私たちの身体にも「気」は巡っています。「気」はエネルギーでもあります。
「気」が滞りなく巡ると健康でいられますが、ストレス、睡眠不足、栄養不足などで潤滑に巡らないと「病気」になります。
「天気」も私たちの身体に影響を与えます。
先人は「気候」の規則性から養生を示してくれています。
気候は毎年一定ではありません。古典「素問」の運気論と呼ばれる箇所には、毎年一定の「主気」と、年ごとに変わる「客気」があることと、年ごとの特徴の30パターンが記載されています。
そこで今回は、運気論から今年の気候の傾向をご紹介します。
用語のこと
今年は「厥陰司天、金運不及、少陽在泉」という組み合わせの年です。
ここで、私達の頭をこんがらかせるのは、用語です。
暗号みたいなものと思って割り切ってしまうと受け入れられるかもしれません。
まずは、「厥陰」とか「少陽」という用語は、以下のようなことを意味しています。
厥陰:風:風を吹かせ動揺する
少陰:熱:熱気を帯びる
少陽:火:熱いこと火のごとし
太陰:湿:湿気を与え雨を降らす
陽明:燥:乾燥しひえびえする
太陽:寒:寒さはなはだし
「司天」は天の気、「在泉」は地を表し、また、「司天」は年の前半、「在泉」は年の後半を主ることも表しています。
今年は「厥陰司天」と「少陽在泉」
上記のように、「厥陰」は風気、「少陽」は暑さを表します。
従って、今年は風気が行われ、炎暑がこれに続くといいます。前半年は風病が流行し、後半年は熱病が流行し、その間に風と燥が人体に影響を与えるということです。
そして、一年を六つに分けてそれぞれの気候の特徴が述べられています。
①初の気:大寒(1月21日頃)から春分(3月21日頃)
主気は厥陰(風) 客気は陽明(燥)
寒気が厳しさを加え、陽明の粛殺のはたらきがやってきます。人々は腎に陽明の燥・涼の気を受けて病みます。腎はその性質として燥を嫌うからです。
②二の気:春分(3月21日頃)から小満(5月22日頃)
主気は少陰(熱) 客気は太陽(寒)
太陽の寒のために、花が雪でつつまれたり、水が氷ったりする。異常な寒気が万物に冷害を与え、霜はつづけており、萌えでた若葉が枯れ、氷雨もしばしばふりそそぎます。しかし、また熱が温暖の気候をもたらします。人々は、内熱を生じる病にかかりやすい。
③三の気:小満(5月22日頃)から大暑(7月23日頃)
主気は少陽(火) 客気は厥陰(風)
厥陰の気が支配しますので、大風が突発します。人々は、涙がでる・耳が鳴る・目がまわるなどの症状をおこしやすい。
④四の気:大暑(7月23日頃)から秋分(9月24日頃)
主気は太陰(湿) 客気は少陰(熱)
太陰の湿と、少陰の熱が撃ち合って、むし暑く、熱を悪む臓の心に影響を与えます。人々は湿・熱から黄疸になったり、むくみを生じたりします。
⑤五の気:秋分(9月24日頃)から小雪(11月23日頃)
主気は陽明(燥) 客気は太陰(湿)
陽明の燥と、太陰の湿が勝ったり負けたりして、だんだんと陰気が深まり、寒気がせまり、しばしば風雨がやってきます。
⑥終の気:小雪(11月23日頃)から大寒(1月21日頃)
主気は太陽(寒) 客気は少陽(火)
相火が支配しますから、陽気は強く、冬眠中の虫も、のこのこ這い出し、河川は氷らず、大地からは陽気がたちのぼりますので、草が萌えてきます。人々はのびのびと日和を楽しみます。しかし、流行性の熱病が発生することもあります。
さて、極端な気候の時は病みやすいので、運気論によると、今年の前半はゆきすぎた肝気の鬱積を散らし、後半年は堅く実しすぎた心気を和らげる必要があるとのことです。
さいごに
上記のようなことは、昔の賢者が見出した法則に則るもので、原則通りにはいかないところは多々あるとは思いますけれど、気を付けて過ごし、準備をすることを示唆してくれていると捉えるとよいのかな、と思います。
最後までお読みいただきましてありがとうございました!