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漢方コラム

ショウガを含む漢方薬~ややこしい生姜(ショウキョウ)と乾姜(カンキョウ)

漢方コラム

 

身近な食材でもあり、場合によっては薬にもなる生姜(ショウガ)。

 

薬味としてだけでなく、寒さ対策に使われる方も多いのではないでしょうか。 

 

漢方薬にもショウガを含む処方が数多くあります。 

 

今回は、ちょっとややこしいショウガの話。

 

 

ショウガ 2015.06.12 富山医科薬科大学

 

ショウガには、

生(ナマ)

乾燥

蒸すか湯通ししてから乾燥したもの

があります。 

 

古典での生姜と乾姜

 

漢方の古い書物では、生のものが生姜(ショウキョウ)、乾燥したものと蒸すか湯通ししたものが乾姜(カンキョウ)と呼ばれています。

 

生姜も乾姜も、どちらも辛くて温める働きがあります。

 

どちらも温めるのですが、身体の温める場所が異なります。

 

生姜は、身体の表面を温め、発汗作用があります。

 

一方、乾姜は身体の中の方を温めます。 

 

人が汗をかくとき、身体の水分と一緒に熱を放出します。例えば、風邪を引いたときに汗をさっとかかせて熱を下げるということは経験するところだと思います。そのように体の表面で汗をかかせたいときは生姜(ショウキョウ)が適しています。

 

以前、紅茶に生のすりおろしショウガを入れる「ショウガ紅茶」というのがブームになり、今でも冷え症で悩む方が多めに生のショウガを入れているという話をよく伺います。 

 

ただ、そのような冷え症の方が生のショウガを大量に摂ることには注意が必要です。

 

前述のようにショウガそれ自体は身体を温めるので適量ならば効果的ですが、摂りすぎると汗を発しすぎて、却って身体を冷やすことになりかねません。

 

その都度申し上げるのが「冷え症なら、生のショウガは薬味程度にして、摂り過ぎには気を付けてくださいね」と(摂らないでと言っているわけではないのです。あくまで適量で)。

 

一方、乾姜は身体の中の方を温めます。

 

古典の記載

 

古典の神農本草経(しんのうほんぞうけい)には、

「生姜味辛温、胸満(きょうまん)咳逆(がいぎゃく)上氣(じょうき)を主どり中を温め血を止どめ汗を出だし風湿痺を逐い腸癖下痢を主どる 生なる者尤も良し久服すれば息氣を主どり神明に通ず」とあります。

 

また、荒木性次先生は、「新古方薬嚢」(方術信和会発行)にて、

「生のしょうがと乾かしたるしょうがとは元一物にして薬効大いに異る。自然の妙用まことに窮究し難きもの多し」

「生姜は進むことを主どり乾姜は守ることを主どる」

と明記されています。

 

それぞれの効能については

「生姜味辛温、氣を扶け外を実す。之れ生姜の発汗薬に多く用ひらるる所以なり」

「乾姜は深きを温むる効あり」

とされています。

 

漢方薬に含まれる「生姜」と「乾姜」

 

乾姜は深いところを温める働きがあります。

乾姜を含む漢方薬には、

甘草乾姜湯(かんぞうかんきょうとう)

桂枝人参湯(けいしにんじんとう)

大建中湯(だいけんちゅうとう)

乾姜人参半夏丸(かんきょうにんじんはんげがん)

柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)

人参湯(にんじんとう)

苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)……

などがあり、いずれも深いところは温める必要がある処方という認識なので納得です。

 

一方、生姜(しょうきょう)を含む処方には

温経湯(うんけいとう)

桂枝湯(けいしとう)

葛根湯(かっこんとう)

厚朴生姜半夏甘草人参湯(こうぼくしょうきょうはんげかんぞうにんじんとう)

小建中湯(しょうけんちゅうとう)

小柴胡湯(しょうさいことう)

小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)

真武湯(しんぶとう)

防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)……

などがあり、生姜の進ませる働きが必要だと感じます。

 

ややこしい生姜と乾姜

 

ただ、ここで少々ややこしいのは現代の日本の薬局方ではショウガを

乾燥したものを生姜(ショウキョウ)

蒸したり湯通したりして乾燥したものを乾姜(カンキョウ)としています。

 

むむ?

生姜(ショウキョウ)は、ナマのしょうがなのか?それとも乾燥したものなのか?と混乱するので敢えて

 

乾燥したしょうがを乾生姜(カンショウキョウ)

と呼ぶことがあります。

 

生姜(ショウキョウ)(乾生姜)

 

乾姜(カンキョウ)

 

生姜と乾姜の働き

 

さて、混乱してしまいましたでしょうか

 

 

つまり、

〇生のショウガは、昔は生姜(ショウキョウ)と呼んだ。いまは一般的には医薬品としてはなり得ない。だってナマですもん。八百屋さんで購入してね、ということになります。ただ、昔はこれをショウキョウとしていたので、古典の記載で生姜(ショウキョウ)とあると、ナマを入れていた、ということになります。分量はナマの分量です。

 

〇現在の医薬品としての生姜(ショウキョウ)は乾燥したもの。生と乾物では重量が異なりますから、おおよそ1/3量にするが専らです。

 

〇乾姜は、現在は蒸すか湯通ししたもの。より身体の内部を温めるのはこの乾姜です。私も自宅で作ったことがありますが、蒸してから乾燥してみるとちょっと黒光りして、元の大きさとは比べものにならない程小さく硬くなり驚きました。

 

乾姜人参半夏丸(かんきょうにんじんはんげがん)

 

さて、来たる2024年11月10日(日)に、私の所属している方術信和会にて、乾姜人参半夏丸の製剤実習が行われます。 

 

乾姜人参半夏丸は、古典の金匱要略(きんきようりゃく)の婦人妊娠病(ふじんにんしんびょう)に記載されています。

6条 姙娠嘔吐不止乾薑人參半夏丸主之

乾薑人參半夏丸方

乾薑 人參各一兩 半夏二兩

右三味末之以生薑汁糊爲丸如梧子大飮服十丸日三服

 

乾姜、人参、半夏の3味を末にして、ショウガ汁で米粉を煮て糊として丸としたものを、妊婦のつわりに用いるというものです。

 

これなどは、乾姜とショウガの両方の効能が含まれるのでしょう。

 

さいごに

 

さて、今回はショウガについて記載してみました。

 

昔、このショウキョウと乾姜の違いはダイコンでいえば、生のダイコン、切り干し大根、たくあんの違いと聞いたことがありますが、いかがでしょうか。 

 

 

今回も最後までお読みいただきましてありがとうございました!

 

 

女性のための漢方相
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【この記事の著者】若草漢方薬局 店主 吉田淳子 

 

 

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