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漢方コラム

「瓊玉膏」と6つの成分(前編)

漢方コラム

 

「開豊 瓊玉膏」は、トロリとした膏状の一般用医薬品「第2類医薬品」です。 

 

 

瓊玉膏の歴史と名前の由来

 

瓊玉膏は、1170年 宋の時代に誕生した薬で、「洪氏集験方(こうししゅうけんほう)」に初めて発表されました。 

 

時の皇帝の子孫が脈々と栄えることを願い、典医たちが叡智を結集させて作り上げられたもの、と伝えられています。

 

瓊玉膏の名前の由来

 

「瓊」とは「美しい玉」という意味で

その「瓊」にさらに「玉」を重ねて、「美しい碧玉」を表しているのだそう。 

 

「瓊玉膏」は、もとは皇帝とその子孫の不老長寿を願い創生された「美しい碧玉」のような至宝の薬だったのでしょう。

 

「開豊 瓊玉膏」の成分

 

瓊玉膏は以下の6種類の生薬を含みます。 

 

生地黄の搾り汁

人参末 

茯苓末

枸杞子

沈香末 

蜂蜜

 

瓊玉膏100gあたりの分量は以下のとおりです;

生地黄の搾り汁 32g (新鮮な地黄60gに相当

茯苓末 8.0g

人参末 2.8g

枸杞子 0.9g

沈香末 0.1g

蜂蜜  38.5g  

 

瓊玉膏の効能・効果

 

瓊玉膏の効能効果は以下のようになっています。 

次の場合の滋養強壮:

食欲不振、肉体疲労、虚弱体質、病後の体力低下、胃腸虚弱、血色不良、冷え症、発育期

 

添付文書から滋養強壮によいことは分かりますが、実際、多くの製剤に上記のような効能・効果の記載があるので、なかなかその製剤の特徴が見えてこないのではないかと思います。

 

では、瓊玉膏はどのような方が服用されるとよいのでしょう。

それを知るためには、成分を知ることが大切。 

ということで、成分の特徴を一つづつみていきたいと思います。

 

まずは、主成分の地黄について。 

 

「地黄(じおう)」とは

 

生薬の「地黄(じおう)」は、アカヤジオウ又はカイケイジオウの根です。 

 


20190518 カイケイジオウ 東京都薬用植物園

 

 

ジオウの根は、その調整法により生薬として3種類の「地黄」になります。

 

① 生地黄(しょうじおう・せいじおう)

② 乾地黄(かんじおう)…生地黄を天日にて干したもの

③ 熟地黄(じゅくじおう)…生地黄を酒で蒸したもの

 

一般的に、生薬として私たちが入手できるのは、②乾地黄と③熟地黄です。 

 

生薬の乾地黄

↑のような黒い色をしています。

②の乾地黄は、カチカチな質感です。

 

③の熟地黄は、ねっとりとしていて分量を量るのに難儀します。問屋さんによっては、熟地黄をさらに乾燥したものが作られており、扱いやすい質感になっています。

 

一方、①の生地黄は、傷みやすく寒さや霜で腐ったようになるため市場には出回りません。ですので、私は生地黄を見たことなく、とても貴重品のように感じています。 

 

と、ここまで記載したところで、「生地黄」をみたことがあったことに気づきました! 

先日(2024/05/30)訪ねた理科大の植物園で見せていただいたペットボトル入りの生のジオウです♪ 

 

アカヤジオウ 20240530 東京理科大

ふふ。嬉しいです。

 

さて、生の地黄は「質が脆く折れやすく汁が多い」という記載が「新古方薬嚢」にもあります。 

 

この「開豊 瓊玉膏」では、①の「生の地黄」の「搾り汁」が使用されています。 

 

では次に、「地黄」の働きに関する古典の記載をみてみましょう。

 

地黄の効能

 

地黄の働きについて、

 

神農本草経には、乾地黄について「味甘寒 血痺を逐い、骨髄を填め肌肉を長ず。」「生の者は尤も良し。久しく服せば、身を軽くし、老いず。」とあります。

 

浅田宗伯先生は、「地黄は味甘寒、性は滋潤し、涼しくして降ろし、血分の主薬となす(古方薬議)とされています。

 

荒木性次先生は、「地黄は味甘寒 血の熱を涼し出血を止どめよく肌肉を潤ほし養ふ」と述べられています(「新古方薬嚢」方術信和会)

 

つまり、「瓊玉膏」の主成分である「地黄」は、「味が甘く、血の熱を涼しながら血を補い、肌肉を潤し補う」性質があることが分かります。

 

(細かいことをいえば、①の生の「生地黄」、②乾燥した「乾地黄」、③酒で蒸した「熟地黄」では、若干気味が異なります。あとで述べる製法がミソなのだと思っています)。

 

 

「人参」について

 

 

漢方の人参(ニンジン)は、ウコギ科オタネニンジンの根茎を乾燥したものです。野菜の人参はセリ科植物なので、全く別物です。

 

オタネニンジンは、高麗人参とか朝鮮人参といわれたりもします。

 

オタネニンジンのオタネは「御種」と書きます。

これは三代将軍家光の頃から人参の国内栽培を試みていたところ、八代将軍吉宗の頃に試行錯誤の末に栽培を成功させ、その種が各藩に与えられたことによる「御」種、といわれています。

 

人参の効能

 

人参は、身体の元気を補い胃腸を強くすると知られていますが、古典を見るとその理由と具体的な働きが分かります。

 

神農本草経には、「味甘微寒、生山谷、五蔵を補い、精神を安んじ、魂魄を定め、驚悸を止め、邪氣を除き、目を明らかにし、心を開き智を益すことを主どり、久しく服すれば身を軽くし年を延ぶ」と記載されています。 

 

浅田宗伯先生は、「古方薬議」に「人参は、味、甘温、微苦。渇を止め津液を生じ、能く諸薬の力を達す」と記載されています。

 

また、荒木性次先生は、「新古方薬嚢」に「乾きを潤し、しぶりを緩む。故に心下痞、痞堅、身痛、下利、喜嘔、心痛、その他を治す」と記載されています。 

 

つまり、人参は、味が甘くて、津液(身体の必要な液体)を生じ、乾きを潤し、五臓を補い、精神を安定させる働きがある、と理解できます。

 

「茯苓(ぶくりょう)」について

 

茯苓については、以前のコラム「水の巡りを整える「当帰芍薬散」の3つの生薬」にも記載しておりますので、参考にしていただければと思います。

https://www.wakakusa-kanpou.com/archives/2528

 

 

キノコの仲間の茯苓

 

 

茯苓(ぶくりょう)は、松の木の根っこから栄養をもらって生活しているマツホドというキノコの菌糸の塊(菌核)です。
 

マツホドは、松の木が伐採されると菌核を形成します。

マツホドは地上からは見えないので、「茯苓突き」と呼ばれる槍のようなもので地中にブスっと刺して掘り出します。 

 

外皮を除いて陰干したものが生薬の「茯苓」となります。 

茯苓は、使用量が多い生薬の一つで、多くの漢方処方に配合されています。 

 

茯苓の効能

神農本草経には、「味甘平」「熱煩満咳逆口焦舌乾を主どり小便を利し久服すれば魂を安んじ神を養ひ飢えず年を延ぶ」と記載されています。

 

薬徴には、「悸および肉瞤筋惕を主治するなり、旁ら小便不利、頭眩、煩躁を治す」と記載されています

 

また、荒木性次先生は「新古方薬嚢」の中で、「水を収め、乾きを潤し、その不和を調う、故に動悸を鎮め衝逆を緩下し水を利して眩悸等を治す」と記載されています。

 

つまり、茯苓には、余分な水をさばきむくみを去る利水作用がある一方で、不足して乾いた部分を潤し補し、安神作用、動悸を治す働きがあります。 

 

 

 

 

さいごに

 

ここまで、瓊玉膏に含まれる3つの生薬、「地黄」、「人参」、「茯苓」をご紹介してきました。

生薬説明の際の古典の記載が細かすぎたかもしれませんね💦

とはいえ漢字は表意文字なので、漢字を「じーっと」みているとなんとなく伝わってくるところがあるのではないかと思います。

 

先人の叡智のつまった「開豊 瓊玉膏」は、「腎陰」を補う働きがあります。 

 

うるおいが欲しい方の美容・アンチエイジングに、

疲れがとれない、働き盛りの方の滋養強壮薬に、

妊娠ご希望の方、生命力を高め、次の世代へと受け継ぐための滋養強壮薬として

お役立ていただければと思います。

 

次回は、6つのうちのさらに3つの生薬と製造方法、留意事項などもご紹介したいと思います。

 

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

 

 

参考資料:

「神農本草経解説」 森由雄著 源草社

「臨床百味本草綱目」 李時珍著 寺師睦宗訓

「生薬単」改定第2版 NTS社

「新古方薬嚢」 荒木性次著 方術信和会

開豊 瓊玉膏 添付文書 栃本天海堂

 

 

女性のための漢方相
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【この記事の著者】若草漢方薬局 店主 吉田淳子 
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